定例会

◆定例会のご案内

 小田原のいわれのある郷土食、中世から昭和30年頃までの歴史、人物、風俗を知る食から見た復興料理を試みて、定例会をもよおしております。
 資料探しをして取り掛かっているため年1〜3回ほどですが、食事をしながら探索するため、思わぬ貴重な裏付けが飛び出してくることもしばしばあって、意義深いひとときが味わえます。

人数に限りがあるため、時に席のお申し込みにご迷惑がかかる時があります。
事前に登録されておりますと、お葉書きにてご案内の連絡を差し上げております。
詳しくは当店にお問い合わせください。
(電話0465-22-4645 FAX0465-22-4655)

 只今のテーマは、資料が豊富でそれでいてなかなか実態がつかみきれない、江戸の庶民の日課がどうだったかを探っております。

歴史献立の
四、五 江戸時代中ごろ〜末期

あと、小田原の都市の礎である室町から末期の
料理をもういちど返り見たい。

歴史献立の
一 中世足柄峠―

このころに今の原型が整ったといわれているからです。

 原形というのは「きんとん」は「金団」きんだんと呼ぶらしいが、形も調理も異なるのですが、食べてみると同じであることに気づく。

 私たちが今食べてるものが、元のルーツを知ることによってふくよかな味わいとあらためて道理の深さを感じずにいられない。

◆定例会のご報告

二宮尊徳の食事タイトル
二宮尊徳の食事写真

二宮尊得の食事

朝(手前左)
冷やご飯にお茶掛け茶漬け
焙った焼き味噌
煎胡麻
漬物
昼(手前右)
炊きたてご飯
味噌汁
煮豆
漬物
夕(奥)
ご飯
吸まし椀(おつけという)
そーだかつをのへしこ
煮もの
干しずいきの炒め煮
漬物
お酒一本
柿が好物だった

来客があっても、ハレの日も特別のことはしまかった。

平成28年11月26日

奈良茶飯タイトル

江戸時代上期、明暦の大火(1657年)の直後、浅草の茶店で奈良茶飯という定食が大流行しました。
茶飯に、豆腐汁、煮しめ、煮豆というセットです。これが、我が国の外食の始まりといわれています。

3茶飯

奈良茶飯というのは、その土地や時代によっていろいろですが、今回は代表的な3つを取り上げました。

【写真左】江戸以前の奈良茶飯で粥仕立てです。小豆が入り、お茶で炊いて、米の5倍ですからやわらかく仕上がります。
【写真上】浅草の茶飯ですが、大豆を炒って、ほうじ茶で炊飯します。
【写真右】その後川崎の万年屋だけが川崎大師の入口として大繁盛していくのですが、出汁や醤油入りに変わっていきます。
小田原宿としては、文献には残っていませんが、万年屋のを用い、海鮮食材をそろえた酒肴をそろえ、それがぴたりと合ったようで、右の仕様の鍋が空っぽになりました。 やはり、海産物に恵まれているせいで、素直な醤油味のご飯が合うということでしょう。

奈良茶飯

奈良茶飯

3つの茶飯にどの添えものが合うかを楽しんでいただきました。
盆の中「奈良茶飯」より右回りに

■煮物
イサキのつみれ、中に白滝と糸昆布の入った油揚げの袋、ひりょうず(小さながんもどき)、小松菜の浸し
■煮豆
白花豆
■香の物
胡瓜、新生姜酢漬、沢庵
■汁
豆腐ふわふわ仕立

盆の外上から

■沖膾
カマス
酢でさっと二度洗う。
つまいろいろ、おろし生姜、かぼす添え
■ナマス ①
鎌倉あえ
大根おろしに土佐酢を加える。
かつおのなまり、鶏の蒸しちぎり、わかめ
■粕あえ
伊豆のわさびを針打ちし、数の子、くらげとともに酒粕に3日漬ける。
■ナマス ②
梅肉あえ
肉厚の梅干を水にさらした後、裏ごしし、エビ、タコ、ホタテ、梅酒でのばす。これをあえ衣とする。
薬味・青じそ細切り
■菓子・ごぼう餅
ごぼうを煮ただけで、かつては料理の菓子として扱われた。千利休の茶席によく出てくるごぼう餅の変形をそえた。
ごぼうを甘く炊き、皮のみ叩いて白玉餅に混ぜ、湯にとって蜜をくぐらせきな粉をまぶした。
■豆腐蒲鉾
豆腐と胡桃を7対3でよく摺り、板付けして、蒸して焼きをかける。

平成28年10月1日

尚武会席タイトル
尚武会席

尚武会席

北条三代氏康誕生500年

現在の小田原城の天守閣は、1960年に復元されたものですが、以来初めて改装し、内部の展示も大幅に変えて恒例のお城まつり。しかも、近場での行楽空気もあって街中は24万もの人出がありました。一年中神輿や提灯が繰り出すオメデタ市民ですが、祭りが多いところは災害にあった時、いち早い復興体制に役立つとの証もあるようです。

■飯
餅きびを加え淡い黄色の染飯(そめいい・ハレ食)に見立てた。
■汁 煮貫(にぬき)
濃い出汁に信州・仙台の合せ味噌で沸かし、厚い布でゆっくり濾す。飯に掛ける「湯漬(ゆずけ)」という意味がある。
■香の物
年越え沢庵は細く刻み、糠床の大根、胡瓜、人参。
■差身 かんぱち子籠(こごもり)作り
紅鮭
妻・茗荷の茎ほかいろいろ
薬味・卸し生姜
煎酒・梅干し風味
本来はこの季節鯉を包丁式に用い腹子を酒で炒って作り身にまぶしたもの。ここではブリの若身のワラサの子腸(こわた)を用いた。
鮭は彩りと煎酒によく合う。
煎酒。ホーロー鍋に4合の酒を沸かしてから、梅干し10個を加え、4割まで煮詰め、薄口醤油で味を整える。
■煮物 祝い盛り付け
車ふ、高野豆腐
月環芋、巻するめ
蒲焼きもどき、青味(あおみ)
形を丸く仕上げる。神饌(しんせん)を表現する。3つだと太陽・月・神という解釈もある。
車ふ、高野豆腐は丸く型抜し、ともに油で素揚げして、油抜きし、ゆっくり煮しめる。
月環は、長芋、里芋をそれぞれ蒸し、裏漉しして合わせ軸芯とし、カマスの上身魚(じょうみ)を一塩したものを、スダレにラップをしてならべ、巻き、蒸し上げ、冷まして切り出す。
巻スルメは、戦国時代の代表の一つ。生イカを表裏かくし包丁を入れておき、柔らかく食べやすくしておく。皮内にくるくるっと巻き、ワラで3箇所きつくしばり、生姜の皮と卸し生姜を加えて煮上げる。生姜はイカを柔らかくする効果。
枕崎からの鰹煎汁(いろり)を使ったが、かつを節よりやや生臭さが気になり、一度昆布出汁と薄口醤油で下煮をし、再度水溶きいろりで味付けした。いろりとは、鰹出汁、醤油が普及する前の、鰹の茹で汁を詰めた当時の万能調味ブイヨン。
蒲焼きは、豆腐をよく水切りし、山芋、牛蒡を卸して加え、生地とする。筆箱大に海苔を広げ、乾燥湯葉をぬるま湯でもどし、海苔にのせ、生地を塗りつけ、包丁の背で縦に筋跡をつけて蒸し、後、タレを塗りながら焼く。切り出して粉山椒をふる。
オクラは茹でて種を取り、包丁で叩く。一部飾り身用に、縦4つ切りを残しておく。
盛って煮汁をわずかに敷く。
■焼物 杉板焼き
鯖の切り身を薄く塩をして、溜まり醤油、酒、みりんを合わせた漬け汁に半日漬け、焼く。赤身の杉板ではさみ、水に湿らせた結草(結いそ:経木のひも)で巻き、塩を塗りつけて香り付け焼きする。
これも室町時代の代表的一品。板の焼物は一族で一番人気のあるもの。
■台の物 出陣式
打ち勝って喜ぶ”
打鮑
勝栗
昆布
左回りに大将、介添人と挨拶し、まず打鮑の太い端の部分を口にして、盃を3度うける。盛付は戦時の状況で鮑や栗がいくつでなくてはならないとか、仏式なら鮑を梅干に変えるとか、流儀も記してある。
打鮑はカンピョウを酒、醤油で下煮をして、レンコンを卸し、米粉、もち粉を合わせ塗り付け、蒸して後、酒醤油のタレで掛け焼きする。
紅あずま芋を栗形にむき、クチナシの実を加えた水に色付けして、蒸して皮をこしらえる感じに焼く。
昆布は玉水(たまみず:酒を加えた水)に浸して、さっと炊き、細く切って3度揚げにする。ほっくりと仕上げる。
■菓子 上がりまんじゅう
儀式には饅頭が付きもののようです。
小麦粉にベーキングパウダー、溶かしたバター、玉子、牛乳、砂糖、塩を加え生地とする。
小豆を晒あんにして、芯に包み、ゆるい温度で焦げ色まで揚げる。

小田原北条五代 1491年〜1590年。 鎌倉時代に公家の食から一段下がった弁当やてんやもんの仕事師の日常食をハレにすえました。けれども300年も経ってくると、将軍や公家との接待を重ねるうち、恥をかかないようにと公家の様式を取り入れてきて、変てこな作法や調理仕法が混在しはじめます。箸づかい一つとっても、ごはんをはさんで食べるな、箸でごはんを横からすくって左手で受け、その手で口に入れろとか。(音を立てるなという意味でしょう)作法のみを終始こまごま記した一冊の本もいくつかあります。 よい点は、国家とはいえないまでも、こうした時の公がで食を取り上げたことです。冷めても旨く、高カロリーで日持ちがして、持ち運びができるという栄養と安全の戦陣食です。時が下って日露戦争で軍部が取り上げ、獣医は野草と自衛隊が集団調理を受け継いできたというのが食史の学説ですが、振り返ってみると、国は一度も扱ってこなかったといえます。

平成28年5月3日

鮎納竿祭タイトル

鮎納竿祭

鮎納竿祭

ひと頃まで、この頃にさまざまな収穫祭がおこなわれました。田んぼにいた神が帰るという暦10月10日、11月21日の「とうかんや」や「えびすだいこく講」など、東国の産物に沿った庶民行事です。店ではこれらを意識的に献立に取り入れ、定例会として発表しています。

夏の間より、酒匂川という小田原市街の東側に位置する二級河川で釣り上げた鮎を3人の釣り名人が届けてくれます。この鮎は北大路魯山人という食通が、夏の土用までは関東では一番だと記していたのですが、上流にダムができて、この文章がK社文庫から消えてしまいました。
ならば秋の落ち鮎に目を向けてみようと、いろいろなこしらえ方で挑んでいます。 釣って届くのは何度かに分かれているので、そのつど半分は素焼きにして一日日干し、店のカウンターの頭上の縄筒に串刺して干しておきます。一方は腸(ワタ)をかき出し、それは「うるか」という塩辛にし、身はその姿ののまま強塩で保存しておきます。

湯豆腐鍋
焼干した鮎(火ぼかしともいう)をひと晩水に浸し、出汁を引きだす。ふくよかなどう表現したらよいかわからないくらい旨味が豆腐に滲み込む。 調味はいらない。しいて言うなら醤油少しか。
塩引鮎の酒浸テ(サカびて)
身の厚い大ぶりのものを使う。頭を取り、塩を適度に抜いて、骨、皮も引いて正身にし、昆布じめにする。(昆布に身をくっつける)削ぎ切りし、器に盛り、煎酒を掛ける。好みで、山葵(わさび)か溶き辛子を付けていただく。
うるか2つ
腸(わた)は掃除をし、刃叩きし、塩、日本酒を加え、毎日かき混ぜる。黒みがかった濃厚な味に仕上がる。
真子・白子はよく洗い、なるべくそのままでこれも塩、日本酒で毎日子守する。色は乳白色に味も淡白で上品である。
鮨3つ
塩抜きは塩味を残すようにして、梅酢で洗い、米甘酢でしめる。姿ずしと柿の葉と笹包みにして。笹は蒸して熱々を。
蕎麦と素麺
そばつゆは湯豆腐と同じに、ひと晩水挽きしたものを出汁汁とし、これを4,煮切りみりん1、醤油1で合わせたもの。 そばも客向きにいいが素麺が抜群に合うので必ずそえる。このつゆはいつまでものびか効く。脇の大根は辛味大根です。このつゆを教えてくれたのは、元プロ野球投手の方で、あらゆる郷土食ではおすすめの一つと挙げたのです。
こつ酒
火ぼかしをさっと炒って、熱燗の日本酒を注ぐ。

参加者が三浦半島界隈の自然栽培に近い生産者らを知っていて、この日はもぎたての大粒みかんを持ってきてくれた。木菓子(きがし)としました。

秋の鮎を見ていると、我が身の晩節をつい思って重ねてしまう。

平成27年11月22日

えべす講タイトル

えべす講写真1

えべす講写真2

 11月20日夕、8人で行事食を楽しみました。
この献立は伊豆半島の付根、かつて日本一のブリの水あげを誇り、みかんの産地でもある神奈川県西部米神村の昭和初期のころのものです。 一升枡を横立にし、中に二体一対のご神体を置きます。鯛が手に入らないときは、赤魚と称し魴(ほう)ぼうにします。吸物は豆腐汁で八杯汁(水4・醤油2・酒2・豆腐)の類。
加えて特別手当した落ちアユ(秋アユ)を焼きぼかし(遠火で焼いて日干しする)にしたものを出汁にした蕎麦つゆで、蕎麦と素麺を堪能しました。 呉服屋さんはこの日を安売り日にしました。赤飯のほか浜焼鯛などを折詰にして配ったりしました。今は、漁場関係者が受け継いでいます。 「えびす・だいこく」とは魚と穀類のことらしく、原始時代から伝わる元祖的福神様なのだそうです。

 上の写真は、赤魚はさしみ・赤めし・金時の煮豆・葱ぬた(小田原は葉ネギ)・豆腐汁・アユ出汁の蕎麦つゆ・みかん。 他に白菜鍋や日本酒を満福しました。

平成26年11月20日

相模の庶民の行事食タイトル
相模の庶民の行事食の写真
相模の庶民の行事食の説明図

 各地には、それぞれ1年に80食の行事食があるという説から取り組みました。
相模は山海に恵まれていると思いますが、交通、流通、経済が未熟だったため、海から1キロ入っただけでその恵みは請けられませんでした。お米が産するところは別ですが、行事食でも雑穀に頼ってました。どれもそれぞれの食材の相性を取り合わせています。

  1. 火ぼかしアユのそばつゆ(火ぼかしは近くの酒匂川の9月末のアユを焼いて干したもの)
    ーー干したアユは水に浸し一晩おく。その出汁でそばつゆをこしらえる。なかなかの手ごたえあり。 打ち蕎麦は、大根の繊切りとともにゆで、水に取りざるに盛る。 大根は蕎麦の厚みにスライスし繊に切ること。大根は増量と味の効果もある。 素麺だとさらにこのつゆのよさが分かる。この繊切りは相模原、山北に記録されている。所によって水をふんだんに使うことが贅沢だった。
  2. あわっぷかし
    ーー粟ともち米半々は水に浸して、蒸気抜けに、サツマイモとムカゴを割いてまぜて蒸す。これも評判がよかった。
  3. 丸麦のおじや(おばくと呼ぶそうです)葱みそ添え。押し麦は大正時代になってらしく、以前は剥いだままの丸麦だった。
    ーーことこと厚い鍋で4,5時間炊く。これもほっくりして旨かった。
    脇に味噌2種類をあわせて葱をそえる。
  4. いきなりまんじゅう
    ーーサツマイモを輪切りにして、下茹でしてから、アズキあんをのせ、薄く熨(の)した小麦粉ですっぽり包み、蒸す。甘さのバランスがよい。
  5. 煮貫(にぬき)の吸物
    ーーみそ汁を布越ししたもの。醤油を使わない古来の作り方。
  6. 加手(かて)なます オシツケ、葱、コンニャク(オシツケは大型の魚、脂ボウズという学名で、白色の脂身で、安全なので移送が利く。固有の産地食)
    ーー葉葱、コンニャクを添える。芥子酢味噌でいただく。開成町、山北町。
  7. 揚げ物類。えびせん(乾燥桜海老、一日干しいか、小麦粉)
  8. ホトトギス(本来真夏の食べ物。味噌を塩大葉で包み油を薄く敷いて仕上げる)。この写真では3つを串刺ししてあげる。
  9. 栗渋皮(素揚げ)
  10. 南瓜の黄な粉まぶし。
    ーーざん切りしたものを蒸し、黄な粉を振るか混ぜる。
  11. 柿こうせん(細切りした柿に麦こがしを混ぜる)柿が固いときは繊維切りにし湯通しする。
  12. アユの早鮓(これも地元の秋口のものを、1ヶ月半米麹で潰したもの)。身が甘みのある艶っぽいべっ甲のような美味さになる。アユの凄さを堪能できる。
  13. 大正時代の握りずし3つ
    青魚(しめさば)の青粉ぬり(ほうれん草の青粉を入れたタレ)。タイのズケ。ヒラメのでんぶ。
    ーー大正天皇がお気に入りだったという当時の主婦向けのすしの料理書本から引用。片栗粉系のタレを施すのは、乾きを防ぎ安全を保つため。20年前に富士吉田市の火祭のとき、食堂で「まつりずし」を食べたら同じ仕法だった。
  14. キクラゲの寒天寄せ
    ーー水で戻して、繊に切り、寄せる。
  15. ピーナツ豆腐(煎った落花生を摺り、本葛や片栗粉で練り、寄せる)。
    ーー胡麻豆腐と同じだがカルシウムの一点で甘んじる。
  16. べったら漬け
    ーー三五八(きごはち)という、山形の糀入の漬け床に近いが、ザラメ砂糖をつかう。
  17. イチジクのオイル焼き
    ーー固めの皮を剥いて、油をぬり、串に刺してぐるりと焙る。

 こしらえてみると、思い旨さがあり、上々の評判でした。あらためて先人の智恵を知ることができました。 「農文協 神奈川の食事」を軸にさまざまな資料を参考にし、自らの足元の食風景を描きました。アユをしょちゅう届けてくれる阿部健さん他たくさんの応援を賜りましたこと、厚礼申し上げます。こういう体に染み入る献立が消えていくのは、手間がかかり過ぎることや、環境の変化でしょうか。
 これまで、長らく取り組んできた歴史・郷土探求献立は、新作ものでは今回で一区切りとさせていただきます。

平成25年11月23日

結納の御席タイトル

 武士が力を誇った頃、料理も独自のかたちができました。
 式正料理や七五三膳といい、式包丁を重んじ、1と4と9と10をさけて、膳の数や品数を合計15になるように華やかに仕上げました。 この式正料理の良い点は、共食(きょうしょく)といって、本膳に参加できない人にも、略式ながら同じ料理が振るまわれることです。
 三三九度のお酒に、亀甲型の板に干しアワビ、昆布、勝栗、串ナマコ、スルメなど盛った盛り物が、今の結納品の目録という縁起物になっています。 奥の間で結納が済むと部屋を移して本膳料理に入ります。

結納の御席写真
  • 前菜 手前のカゴ
    • 太刀魚の月環。
       まるくこしらえて祝儀をあらわす。―真ん中。
    • うずまき卵焼。
       模様から観世焼ともいう。―斜めうしろ。
    • 筍ふき味噌。―その横。
    • 鶏松風。ゆで卵、キクラゲなどまぜ柔らかくしてある。―右端。
    • とり肝ペースト。 下はパン。
    • 鮭の丸ずし。卯の花を握ってある。―手前。
    • 畑の竹輪。かんぴょうに米粉、蓮根など塗ってアスパラに巻いてある。―左端。
  • 差し身 カゴの向こう
    • 平目はそぎ身にして、菜花を昆布しめした軸に巻く。
    • 石鯛も軽く昆布でしめて、そぎ身にして盛る。
    • 梅干の煎り酒。
  • 金目鯛のお吸物 赤い椀
  • 焼物 ひげたら、きんかん蜜煮 右の端
  • 蓮根むし 刺身の左後ろ
    • 具材は白身魚、シイタケ、百合根、生麩、竹輪、ギンナン
  • 天ぷら 右上
    • わかさぎ、寒タケノコ、ウドの大原木巻き(枯れ枝を束ねたさま)かき揚げ
  • 赤ごはん
  • 香の物
    • 大山菜(からし菜の類で塩もみしてある。東丹沢の名産品) 自製のタクワン。
  • 白玉ぜんざいと水菓子

鎌倉時代から関東の食は公家に出入りした時の振舞われた弁当を元に発達したといわれています。その時の弁に計らいいつでも、どこでも、詰めて持ち運べて、軽くて、栄養価が高く、濃厚な味に仕上がっていることです。今回は部屋なので、温かく柔らかくしました。

平成25年2月17日

タイトルお茶処
 日本茶いろいろ味くらべの郷土会席と題して、日本の茶所のひとつ、静岡県牧之原市出身の飯田辰彦氏を迎え、日本茶の成り立ち、文化、製造方法などを辛口で語っていただきました。
 氏は世界中を駆け回り、数々の本を執筆しているノンフィクション作家です。新刊「日本の勘所、あの香気はどこへ行った?」の中で、私たちがさりげなく飲んでいる日本茶の奥深さを再認識させていただきました。
 さまざまなお茶を産地に沿っておよそ三時間、お酒の入る余地のない、まさにお茶一色の例会でした。
 なお、小田原の地元からは、足柄茶葉生産者 守屋栄治様ご夫妻が産品をご持参くださり、現場の話も詳しくうかがいました。
 料理は、表題通り、茶所に土着した郷土料理をしつらえました。今回は、大井川を挟んだ東西のかたち、海山と高山(こうざん)川田畑それに流通は東海道、遠洋港と、ありとあらゆる食材が張りめぐらされ、どうまとめていいのか分からないぐらいでした。この献立の時代設定は昭和初期に定まったという設定になっています。
料理お茶処
  • 吸椀 冬瓜の澄まし 口・柚子
    • とうがんは湯せん炊き(二枚鍋)し、薄味に仕上げる。
    • 天に振り柚子をそえる。
  • 食事  麦ごはん  とろろ汁(山芋、青海苔、うずら玉子)
  • 箱詰 (右上から時計回りに)
    • 煮物
      • 子持ちアユ番茶煮、つわぶき辛煮
    • 和え物
      • 椎茸、五三竹、くるみ白衣、葉らん敷
    • 浜辺のぬた
      • さしみ(めじな昆布じめ、鯛、伊勢海老)つまうご(海苔)、薬味 茹でたニラと明日葉、さらし葱、酢みそ 口・一味
  • ようじゃ・こじはん(間食)4つ
    • 上から ソバのなべがき(そば、里芋、さつま芋)
      芋もち(くず米、里芋、さつま芋)
      蒸しかぼちゃのきな粉あえ
      柿こうせん(麦こがし、芯に柿)
  • 炙りもの 3つ
    • キスの風干し イルカのタレ 塩ソーダがつお
  • 揚げもの 2つ
    • 珍皮包み(みかんの皮、さつま芋、金時煮豆)イカと桜エビ
      • イカは天日干しし、短冊に切る。天ぷら衣に干しイカ、桜エビを入れて揚げる。
  • 菓子の類 2つ
    • むかご寄せ、つわぶきの葉を敷く。
      • ムカゴは蒸して、小麦粉に黒砂糖少し、水で練り、流し缶に入れて蒸し上げる。
    • 畦豆3さや
  • 別皿2つ
    • 笹鮨
      • 地引網雑魚を笹で包み、3日重石で押し、さっと蒸して盛る。
    • 昔の早鮓
      • 同じ雑魚を玄米で1ヶ月漬ける。いにしえの小田原方法。

平成24年10月27日

タイトル山上宗二
●指導は神奈川県立図書館元調査部長の石井敬士さん
◎利休の弟子。秀吉に使え反駁し、小田原で再会し抹殺されたなぞ多き茶人。
5代氏直が招いた2年間の茶事献立を興しました。
後北条3代氏康の御成り本膳(将軍を招く)と同じころの松屋会記という茶事録を参考にしています。
料理山上宗二
  • 塩引き(塩鮭の薄作り、いり酒)
    • ふつう昔はシオビキは焼魚ですが、この本膳は豪華で焼鯛もあり、となると、塩乾燥の鮭を酒浸テ(サカびて)と見るのが妥当とみなしました。
  • 貝盛り(さざえ味噌あえ)
    • 貝の形をした器を用いる時もあったようです。ここではサザエを茹でてから和えましたが、火を加え安全や食味を考慮した、加雑(かぞう)ナマスというタニシなどの類になります。カゾウはいろいろ解釈があります。
    • 西ではアメノウオという、アマゴのことですが、(東はいなくて、ヤマメ)この魚は必ずカゾウナマスと書かれています。
  • 汁 ナ(菜・セリ)
    • みそ汁を布濾したのを煮ぬきといい、これを本膳に必ず付いている湯漬(ゆずけ)に掛けました。もちろん白湯もありますが、掛け汁を競ったことが記されております。
  • 飯(玄米)
    • 石井先生は当然と判断されました。
  • 香の物
    • 山牛蒡、大根ー一夜漬け
  • 二の汁 ススキ(すずきの吸物)
    • 河口で採れるせいか当時の定番食材。
  • 引物(いわし早鮓、しろぎす昆布じめ)
    • ヒキモノ・ヒキテは取り分けること。
    • 早ズシに玄米を使う漬け方は小田原と房州の一部のようです。
    • きすー―は海ぎわならではの贅沢品といえます。
  • 菓子(ういろう、ごぼう、おかき)
    • 松屋――では焼き栗、慈姑、昆布など身近で素朴なものが多くならんでいる。加工品は生麩類が多かった。
    • ごぼー―は茹でて餅粉にいれ、再び茹でて揚げる。
    • イテモチ(凍餅)はよく出ていて、南蛮ものが結構入っていたという指摘で揚げ餅になりました。

山上宗二研究という史料書が6月に手もとに入って、これまでお世話になった故人の先生のお二方が宗二に興味を持っておられたのを思い出しました。
荻窪、久野という地名が書いてあり、東屋を立て、気軽にお茶会をやっていた、と。石井先生は素朴な献立を指摘されましたが、庶民の目で見た、わびというのがなかなか出せないふがいなさを覚えたしだいです。

平成23年10月30日

  • 座付茶 くずの花の酢漬
  • 汁 黒皮茸の吸い物 芹 口・針生姜
    • 卵豆腐に寄せる。黒-―は乾燥高級食材。
  • 飯 栗の炊き込み    色・くちなし
  • 香の物 里山のむしもの
      蕎麦 小角餅 くこの新芽 もみじ人参 野蕗
      焼太刀魚 そばの実入りくず餡 おろし山葵
    • クコは穂先と葉をむしり湯がく。
    • ノブキは灰汁強くサンショウの実で炊く。
  • 焼き物 特別栽培のえのき茸 子持ち鮎焼煮浸し
  • 煮物 里山のむしもの
       蕎麦 小角餅 くこの新芽 もみじ人参 野蕗
       焼太刀魚 そばの実入りくず餡 おろし山葵
    • クコは穂先と葉をむしり湯がく。
    • ノブキは灰汁強くサンショウの実で炊く。
  • 小皿3品
    1. 畑のしゅうまい
      まこも竹 じゃが芋 焼き麩
      • 肉は入れない。マー―の歯応えを味わう。
      • マー―は5mm角にしてさっと湯がく。
      • ジャガは男爵を茹でマッシュ。軽く胡椒。
      • 麩は乾燥を2cm角に切り煮詰めさらに絞る。
      • 以上を皮で包んで、竹皮を敷いて蒸す。
      • 芥子醤油で。
    2. 食用菊柚子釜盛り 紫蘇の実
    3. 四方竹
      • かつお節を効かせて煮る。
  • 二の汁   ムキ茸薄みそ仕立
    • ゼラチン質があるため舌ヤケドの別名がある。
  • 油物 天ぷら ちん皮包み・丸じゅうとうずら豆 真菰(まこも)竹 花弁茸  そえつゆ
    • ちんー―は青みかんの皮を米ヌカでアク炊きし白綿をそぐ。サツマイモは茹でて裏漉し。ウズラは蜜煮する。
    • マコは斜め六ミリ厚。
    • 花-―は菊の花弁そっくり。
  • 菓子 マテバ椎の羊羹
    • マテー―は大ぶりの椎の実。粉にして、さらし餡とで寄せる。渋みを味わう。
  • 引き手
    1. 一位の実 山葡萄 猿梨 鬼胡桃
      • ヒキテとは取り分けること。
    2. かやの実を炒ったもの

エノキは信州栄村の大庭さんの特殊育成もの。しゃっきり感、持ちが抜群。説明を聞くとこれからの農業のあり方や展望を示しているかのよう。

平成23年10月15日

  • 座付茶 ぎぼうしと釣鐘にんじんの花弁酢漬
  • 汁 夕顔しんじょ赤だし煮貫仕立
    • 麩と葛で寄せる。
    あしなが茸類 軸三つ葉 口・山椒粉
    • 煮貫は布越しのこと。
  • 飯代わり 蕎麦寿司3つ そばつゆ
    • 海苔、薄焼き玉子、酢ソバ、ワサビ、タネの順。
      1. 「スベリヒユ」の甘辛煮
        • スベ――は畑の雑草。茎を茹で1日干す。旨い。
      2. 鯛そぼろ
        • 炒り煮。
      3. 干瓢、鯨ベーコン
        • カンピョウは自前。玉子に替えて大葉に。
  • 生膾盛り 「しろざ」浸し からす瓜繊切り くみ湯葉寄せ
          岩茸 人参とユウガオ昆布押し 蓮芋 茗荷
  • 凍みこん 梅酢そえ
    • シロー―も雑草。これも評判よかった。
    • カラスー―は皮肉をつかう。歯応えがいい。
    • ユバも自前。
    • 凍みー―は冷凍庫で2日間。
    • 梅-―は昆布だし、煮切りみりん、梅干、酢。
  • 煮物
    1. 茄子揚げだし
        鮭くんせい挟み シシトウ 糸かつを 張りつゆ
    2. 2 冬瓜釜 芋 人参 生椎茸 こうや豆腐 鶏丸
      いんげん 白玉
      亀甲あん
      • トウガンは横にし、上部に包丁を渡し中わたをくり抜きどぼんと煮る。
  • 肴もの 牛乳衣天ぷら 野かんぞうの花 みょうが にらの花蕾
        小粒しいたけ ゆうがおの粕漬 青唐辛子と葉唐辛子煮
        かんぴょう八幡巻き 茹で落花生
    • 八幡――カンピョウを薄く煮て、白玉粉、米粉、レンコンをおろしたのを塗り、ゴボウ、アスパラに巻き、酒醤油を掛焼する。
  • 水物 梨きんとん
    • ナシは蜜煮し、サツマイモをクチナシで染めキントンにして詰め
    真桑瓜 ぶどう

使用した冬瓜は神奈川県三浦市の角田さん方のもの。肉厚、旨味申し分ない。
これまでこんなのに出会ったことはない。メロンとともに名人。

平成23年8月27日

  • 座付茶 浜昼顔花弁の酢漬 白湯
    • 鮮紅色ですがすがしい味。
  • 飯がわり 玄安(げんあん)の山家そば
    • 新ソバを待つまでアザミの葉を入れるとよい。
    薬味 つゆ
  • 汁 翠雲すうぷ 冬瓜 白ねぎ
    • 各材料を刻んで水から煮る。塩、胡椒。医療食にもなる。
    じゃが芋 生椎茸
  • 箱詰4種
      進めずし3つ
    1. つわぶき入り信太巻
      • ツワブキを煮て刻みスシ飯に混ぜる。甘煮の油揚げで包む。
    2. 山三つ葉と鮎の握り
      • ミツバも茹で刻み、アユは梅酢で〆て握る。
    3. 真竹筍の印ろう 茎山葵の醤油漬添
      • タケノコは下煮し中をくり抜き飯を詰め、落ち着いたら1センチ厚に切る。
  • 焼物2つ
    1. 遡上香魚山椒味噌
      • アユのこと。青実付のサンショウを煮て味噌にする。
    2. 鰻もどき
      • とうふ、やまと芋で身を、皮は焼海苔で蒲焼とする。粉サンショウを振る。
  • 膾盛り 破竹 蕗 抹茶羹 揚麩
    • ナマスは本献立の主品として捉えている。
    人参 胡瓜
    • それぞれを下煮し5色に美しく盛る。
    胡桃だれ
    • 猪口に盛り添える。
  • 肴もの 水無月豆腐 つる菜  板取(いたどり)芥子あえ
    • アズキ入りは厄除けという。胡麻豆腐に小麦粉を入れ手ごたえを。みずみずしく三角に切る。
    • 野すみれの酢漬
    • 田芹の芥子合え
      茎だけを使いあえる。
  • 南蛮皿  青紫蘇たっぷりの餃子3個
    • 柔らかい野性シソを沢山入れる。
  • 油物  天ぷら
       浜豌豆 山三つ葉の茎 浜昼顔の茎 うこぎ 煎り塩
  • 水の物  浜昼顔の葉包みの草もち
    • ヨモギ粉と砂糖入りのもち。
    小豆羊羹

北条玄庵は小田原城の北裏筋の重要関を守った。早雲の子息で5代を見つめた賢人として知られる。池が今もあり、心形をして小さいが風情がある。借名は本名からずらすのが慣例。

平成23年6月26日

摘み草駕籠弁当
酒井利幸 四方山話(春の摘み草1)より
 今から2か月程前だったでしょうか。米橋さんから摘み草籠料理をやってみたいとの話しがありました。季節に合わせて何が使えるのか?どう料理するのか?と打ち合わせを重ねました。
 小田原周辺は、海岸・平野・山地など変化に富んだ地形に多数の植物が生育する環境となっています。当然のことながらも、摘み草に適した草も多いということが言えます。
万葉のもっと前から江戸時代にかけても摘み草は身近でした。
「君がため 春の野に出て 若菜摘む
            わが衣手に 雪は降りつつ」
早春に、乙女が七草を摘んでいる情景が目に浮かぶようです。
 高度成長を成し遂げた、近代日本の私たちが忘れかけている摘み草文化を、もう一度見直してみることも良いのではないかと思います。
  • 座付茶 春蘭花弁
    • 花弁は酢漬。一輪を茶碗に入れ湯を注ぐ。
  • 飯 小俵握り3つ
    • うこぎ 竹の子
      ウコギを混ぜたのに薄くへいだタケノコを上にして握る。
    • 蕗とその葉
      茎を混ぜて、上に葉の辛煮をのせて握る。天に木の芽を。
    • 土筆 〆鯖 桜葉
      ツクシを混ぜ、サバをのせ、桜葉を帯に巻く。
  • 汁 早取りじゃが濃しょう仕立を口・青海苔
    • 新ジャガを具に、薄味噌汁に葛をまわし入れ、吸い口に青海苔粉を振る。
  • 膾 3点
    • まゆみ豆腐 黄な粉
      新芽を湯がき昆布だしと本葛で寄せる。肩掛けに黄な粉。
    • 花筏半ペン
      鮭と豆腐、大和芋でハンペンを作り葉形で抜く。
      その上にハナイカダの湯がいたのを2葉をのせる。
    • わらび鱠 ほうぼう
      ワラビの刻みとホウボウの昆布〆の細切りを混ぜ合わせ手前にかぎワラビを添える。
  • 串もの3色
    • よもぎ団子
      生地に少し砂糖を加える。
    • 百合根丸
      蒸して裏漉しまるめる。
    • 山吹金団
      カボチャを3分1が餡として卵黄、砂糖。皮は小麦粉。
      オーブンで焦げ目が付かないように焼く。
  • 温菜
    • 野蒜しゅうまい
      豚、鶏のひき肉にノビルの茎も刻み入れる。
  • 猪口
    • あけびの白和え
      新芽を湯がき酢漬けにして、豆腐とあえる。天にスミレを。
    • 野すみれの酢漬
    • 田芹の芥子合え
      茎だけを使いあえる。
  • 油もの
    • 高野豆腐卯の花射込み
      横腹に包丁を渡しその中に詰める。天ぷら衣で揚げる。
    • 明日葉 サルトリイバラ
    • 雪ノ下 破れ傘 椿花
      それぞれ卵白の白扇(はくせん)衣であげる。
  • 香の物
    • たんぽぽ寸期漬
      1ヶ月塩漬する。
    • 細ごぼう
      味噌漬にしたもの。
  • 生つくり
    • 里山の笑い盛り
    • クレソン 蒲公英 山三つ葉 やま独活 炒り胡麻油 煎り塩
  • 菓子
    • 金柑蜜煮
      畑の隅の香りがあるもの。
    • 姥百合きんとん
      ウバユリは根元を茹で、甘藷きんとんにそえる。

 平成22年11月21日に、歴史・郷土献立の例会を催しました。その際に、「小田原と食文化」と題して、石井敬士氏の短い講演をいただきました。。
 七つ立ちと言って朝四時に出て、一日歩くのは男は40キロ女は30キロでした。小田原は江戸から戸塚に次いで二泊目。女はおよそ三泊目。江戸から京都まで男で12〜14日かかりました。本陣4、脇本陣4計8つは東海道で一番大きな宿でした。(二番目は箱根で7つ)近郊のものが所用で利用する商人宿も街道やや離れてありましたが、旅人の旅籠は95軒。宿場の人口5,404人。武士を除いて1,542戸。宿内は漁業はあったが生活活動がありません。
 柳家三三小田原出身の落語家がいますが、小田原を舞台とした落語に三人旅とか抜け雀。弥次喜多の五右衛門風呂。芝居で外郎売。浮世絵もあります。
 旅籠には等級がありました。木賃宿は自炊。薪の値段。旅籠は95軒から100件前後あって賃料200文。旅費が一日分を守貞漫稿では二八そばから24文と換算して400文で一万円。中村仲蔵の自伝からは7千円から1万円と算出。一日あたりの費用から半分を旅籠代に使ったようです。
 この献立からするとこれは上流の人の1万円以上。相当贅沢な内容です。
 ●著者宇佐美ミサ子氏は1泊1万2千円としています。
 名物について。ういろう。梅漬。いかの塩辛。かつおのたたき(身の切れ端や小骨を叩いて混ぜた塩辛をいう)、ちょうちん。
 特徴として、城下町であり宿場町も兼ねた点が挙げられます。お城ばかり語られますが宿は取り上げられません。これは今後の課題だと思います。
例会献立

「おだわらの旅籠食」
文化10年(1813年)大坂の商人枡屋平兵衛門が、宿の食事をメモした「道中日記」がありました。

小田原宿
夕食

  • 汁  無品
    煮貫(にぬき)という吸物。味噌に鰹節削りを混ぜ、水で溶き、煎じ、布袋に入れ天井から吊るす。和風コンソメ。吸口に割胡椒。
  • むしかれい・菜・うど・味噌酢そえ
    ひらは煮物のこと。カレイは塩をして。昆布を敷き、その上にカレイ、カブ、キクラゲをのせ蒸す。ウドは出す前に盛る。
    菜はクセのないものが合う。ウドは本当の芽ウドのことと思われる。柔らかい土をかぶせ紫色の芽を削り取る。当時の花形高級促成野菜。
    味噌酢は江戸時代に消えたものだが、八丁味噌のあら粒を味噌に浸し、香りを移したもの。今のポン酢よりよっぽど味に腰と深みがある。
  • 焼物 小かれい
    メイタカレイを昆布出汁、酒、醤油で煮てその後焙る。
    夏豆甘煮。盛ったそばに乾燥ソラマメ(夏豆)の甘煮をそえる。
  • 坪 膿奬(こくしょう)・いも・海苔
    朝仕込みの白味噌に出汁に本葛で溶いたもの。香りに青海苔を振る。シチューである。
  • 御飯は精白米の銀杏炊き。
  • 香の物は浅漬大根、味噌漬牛蒡

要点:カレイは火を加えても固くならない。白身魚なので東西老若それぞれに合う。江戸時代の調理は味噌が基本だった。
信州味噌、仙台、二州のほかさまざまな味噌を使って味付けをした。まろやかな趣きのあるのは、江戸時代を反映している感じがする。このあと醤油へと変わっていく。醤油のほうが早く楽なせいであろうが丸みが断然違う。